「入れ歯って歯じゃないから、水で流すくらいでいいよね」
「毎日水で流しているけど、特に問題ないはず…」
そんな風に思っていませんか?
実は、入れ歯の洗浄不足が、むし歯や歯周病の原因になることもあるのです。
今回は、入れ歯を清潔に保つことの重要性と、自宅でできる正しい洗浄方法のポイントを、歯科医師の立場からわかりやすく解説していきます。
目次
■入れ歯でもむし歯や歯周病になるの?
結論から言うと、なります。
特に、部分入れ歯を使用している方は、残っている天然歯や歯ぐきに汚れがたまりやすくなり、むし歯や歯周病のリスクが高くなることがわかっています。
さらに、入れ歯そのものにも細菌やカビ(カンジダ菌)が繁殖しやすく、誤嚥性肺炎や口臭の原因になることも。
「人工物だから汚れない」というわけではなく、入れ歯も毎日磨いて洗う対象のひとつなのです。
■入れ歯を洗わないなど、清潔に保たないと起こりうるトラブル
◎ むし歯・歯周病のリスク上昇
部分入れ歯のバネ(クラスプ)がかかる歯は、汚れがたまりやすく、むし歯になりやすい場所。バネ周辺の歯ぐきも炎症を起こしやすく、歯周病の進行が早まることもあります。
◎ 口臭・口内炎・カンジダ感染
不衛生な入れ歯は、舌や粘膜に炎症や口内炎を引き起こす可能性があります。
また、入れ歯に付着した菌が増殖すると、不快な臭いの原因にもなることがあります。
◎ 誤嚥性肺炎のリスク
特に高齢者の場合、入れ歯に付着した細菌が唾液とともに気管に入り、肺炎を引き起こすこともあります。
誤嚥性肺炎は死亡原因の第6位にもなっていることから、毎日の洗浄は、命を守る衛生習慣のひとつとも言えるのです。
※令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省
■正しい入れ歯の洗浄ポイント
1.毎食後に入れ歯を外して洗う
流水で表面の汚れを落とすだけでなく、歯ブラシや入れ歯専用ブラシで丁寧にこすり洗いをしましょう。ただし、研磨剤が含まれている歯磨き粉は、入れ歯を傷つける原因になるため、入れ歯に使用するのは避けましょう。
2.就寝前は必ず洗って、外して保管
夜間もつけっぱなしにすると、細菌やカビの温床になりやすく、口腔内の休息が妨げられます。清潔にしたうえで、水や専用の保管液に浸けておくのが基本です。
3.入れ歯洗浄剤を週1~2回は使用
こびりついた汚れや臭いが気になる場合は、洗浄剤の泡や成分が汚れを浮かせてくれるため効果的。ただし、「洗浄剤だけに頼る」のではなく、ブラシでの物理的な洗浄と併用することが重要です。
■入れ歯だけでなく、口の中も一緒にケア
入れ歯を清潔にしても、お口の中が不衛生なままでは意味がありません。
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歯ぐきや舌の表面の汚れ(バイオフィルム)も清掃しましょう
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天然歯が残っている場合は、歯ブラシ+フロスや歯間ブラシも併用したケアが大切
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うがいだけでは取り切れない汚れが残るため、毎日のブラッシングが基本
■定期的な歯科医院でのチェックでトラブル予防
「入れ歯は入れて終わり」ではなく、使用していくうちにバネが緩んだり、合わなくなったりすることもあります。
半年に1回程度の定期検診で、
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入れ歯のフィット状態
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お口の粘膜の健康状態
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残っている歯のむし歯や歯周病チェック
を行うことで、快適で清潔な口腔環境を長く保つことにつながります。
【入れ歯も「磨く」「洗う」ことが基本ケア】
入れ歯はあくまで自分の歯の代わりとして毎日使う大切なパートナーです。磨かずに使い続ければ、むし歯や歯周病、口臭などさまざまなトラブルの引き金になるリスクが高まります。
入れ歯を使う方も、天然歯がある方と同様に、正しい清掃習慣と定期管理を意識していきましょう。