親知らずとは、一番奥に生えてくる第三大臼歯のことで、10代から20代にかけて生え始めます。しかし、親知らずは生え方が悪かったり、痛みや腫れを引き起こしたりすることが多く、歯科医院で抜歯を勧められることも少なくありません。
では、親知らずは本当に抜歯しなければならないのでしょうか?また、抜歯しない場合にはどのような注意が必要でしょうか?
目次
■抜歯が推奨される親知らず
◎ななめや横向きに生えている
親知らずがななめや横向きに生えていて、他の歯に圧力をかけたり、隙間を作ったりする場合は親知らずや隣の歯がむし歯や歯周病になりやすくなります。また、噛み合わせが悪くなることもあります。
◎腫れや痛みがある
むし歯や感染により痛みの症状がある場合は抜歯を推奨される可能性が高いです。親知らずが歯茎の中に埋まっていていても、痛みや腫れがある場合は親知らずが感染したり、嚢胞(のうほう)(※)を引き起こしたりする可能性があります。
(※)嚢胞・・・顎の骨の中などにできる袋状の病変。
◎噛み合っていない
親知らずが真っ直ぐに生えていても、上下の親知らずが噛み合っていない場合は、親知らずは噛む機能がない上に、食べ物が詰まりやすくなります。また、歯ぐきが親知らずの頭に被っていることも多く、歯肉炎や口臭の原因になります。
■親知らずを抜歯するメリット
◎トラブルを予防できる
抜歯が推奨される親知らずは、清掃性が悪く、食べかすや細菌が溜まりやい状態であることが多く、その結果、親知らず自体がむし歯や歯周病になったり、周囲の歯ぐきに炎症を起こしたりする可能性が高くなります。
早めに抜歯しておくことで、将来的に起こりうるトラブルを予防することができます。
◎隣の歯を守れる
親知らずは、隣の歯にも影響を与えることがあります。横向きやななめ向きに生えている親知らずは、隣の歯を押して歯並びを悪くしたり、隙間を作って食べ物が詰まりやすくなったりします。その結果、むし歯や歯周病のリスクが隣の歯にも及ぶことがあります。
◎歯列矯正をする場合にも良い
親知らずは、生えるスペースが足りないために他の永久歯と正しく噛み合わないことが多くあります。また矯正後の後戻りの原因になることも。そのため、親知らずを残しておくと、歯列矯正の効果を妨げる可能性があります。
■親知らずを抜歯しなかった場合の悪影響
◎トラブルのリスクが高まる
前述の通り、親知らずはトラブルを起こしやすい歯です。そのため、抜歯しないで放置しておくと、むし歯や歯周病などの病気にかかるリスクが高まります。また、これらの病気は重症化すると全身に影響を及ぼすこともあります。
さらに、親知らずの周りの骨は年齢と共に硬くなっていきます。そのため、抜歯する際には骨を削ったり、歯を分割したりする必要があることが多くなります。
◎治療費や時間が増える
親知らずを抜歯しないでおいてむし歯などトラブルが起きた場合、抜歯するだけの場合よりも治療費や通院回数、治療時間が増えることがあります。
■親知らずを抜歯するタイミング
親知らずを抜歯するタイミングは、個人差があります。しかし、一般的には以下のような場合に抜歯を検討することが推奨されます。
・親知らずがむし歯になっている
・親知らずが智歯周囲炎などのトラブルを起こしている
・親知らずが隣の歯に影響を与えている
・親知らずが生え方や位置が悪くて清掃性が悪い
・歯列矯正を行う予定がある
また、親知らずを抜歯する際には、若いうちに行うことが望ましいです。若いうちの方が、骨が柔らかくて抜きやすく、創傷治癒も速い場合が多いためです。
親知らずは一般的に10代後半~20代前半に生えてくるので、20代前半までに抜歯をしておくのが望ましいです。
■抜歯の必要がない親知らず
◎親知らずがまっすぐに生えていて、上下の親知らずと噛み合っている
この場合、親知らずは噛み合わせ的にも問題なく機能し、他の歯に影響を与えていません。また、歯磨きもしやすく、むし歯や歯周病のリスクも低いでしょう。
◎親知らずがななめや横向きに生えている場合でも、痛みや腫れがない
このように親知らずはトラブルを起こしていない場合は必ずしも抜歯が必要とはいえませんが、将来的に問題が起きる可能性もあるので、歯科医院での定期検診は必須です。
◎親知らずが埋まっていて痛みや腫れもない
この場合、親知らずは無害と言えますが、埋まっている親知らずはレントゲンで確認する必要があります。
【親知らずを抜くかどうかは歯科医師と相談しましょう】
親知らずの抜歯は、必ず必要というわけではありません。しかし、親知らずはトラブルを起こしやすく、放置すると重大な合併症を引き起こす可能性もあります。そのため、親知らずの状態やリスクを正しく理解し、トラブルが起こってしまう前に、歯科医師と相談しながら治療計画を立てていきましょう。