かわいい赤ちゃんを前に、思わずほっぺにチュ。「赤ちゃんにキスするとむし歯菌がうつるらしい」と聞いて、ドキッとしたことはありませんか?
今回は、「赤ちゃんにむし歯菌はうつるのか?」「スキンシップは控えるべきなのか?」といった疑問に、歯科医師の立場からわかりやすくお答えします。
大切なのは“菌をゼロにする”のではなく、“むし歯になりにくい環境を整える”こと。そのためにできる、毎日の予防習慣についてもご紹介します。
目次
■赤ちゃんにむし歯菌はうつるの?
むし歯は、「むし歯菌(ミュータンス菌)」という細菌によって引き起こされます。そしてこのむし歯菌、実は生まれたばかりの赤ちゃんのお口には存在しません。
では、どこから来るのでしょうか?
その多くは身近な大人のだ液を通して、お口の中に入り込むのです。
<こんな行動が菌のうつるきっかけに>
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赤ちゃんへのキス(口元、手など)
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同じスプーンや箸を使う
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食べ物を口移しで与える
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おしゃぶりを親が口にくわえてから赤ちゃんへ渡す など
特に、生後1歳半〜2歳半頃は「感染の窓」とも呼ばれ、この時期にむし歯菌が定着しやすいといわれています。
■スキンシップはダメ?それともOK?
赤ちゃんへの愛情表現としてのキスやふれあいは、子どもの心の発達にも大切な行動です。
「むし歯菌がうつるからスキンシップはしないほうがいい」なんて、極端な制限をする必要はありません。
大切なのは、むし歯菌の“感染”そのものを過剰に恐れるのではなく、むし歯になりにくい環境を整えてあげること。つまり、「うつること」よりも「うつっても発症しにくいお口をつくる」ことが重要なのです。
■むし歯予防のために今日からできること
◎だ液の共有を減らす工夫を
家族間でもスプーンや箸の共用を控え、赤ちゃん専用の食具を用意しましょう。キスをする場合も、口元や手を避けて、頬やおでこなどにすると安心です。
◎おやつ・食事は“砂糖控えめ”を意識
むし歯菌は、糖分をえさにしてむし歯の原因となる酸を出します。特に清涼飲料水やジュース、甘いお菓子のダラダラ食べは、むし歯リスクを高める原因に。過剰な甘味は減らし、食事とおやつの時間を分けるだけでも効果があります。
◎仕上げ磨きを習慣に
赤ちゃんでも、歯が1本でも生えたらケアのスタート。毎日の歯磨きを親子の習慣にして、歯ぐきやお口に触れることに慣れさせておきましょう。歯磨きが難しいときは、ガーゼで拭うところからでもOK。大きくなっても、8〜9歳頃までは保護者の方による仕上げ磨きが必要です。
◎家族もお口のケアを徹底
上記でご紹介したように、赤ちゃんのむし歯は親の唾液を通してお口の中に入りこみます。保護者の方のお口が健康であることが、赤ちゃんのむし歯を予防する大きなきっかけにもなるのです。むし歯や歯周病の治療、定期的なクリーニングを受けることも大切です。
【むし歯菌を“ゼロ”にするより、むし歯に“なりにくい”環境づくりを】
赤ちゃんのむし歯は、むし歯菌の“感染”だけではなく、その後の食生活や口腔ケアの積み重ねで大きく左右されます。
「キスしちゃいけない」と神経質になる必要はありませんが、日常の中で“唾液の共有を減らす意識”を持つこと、そして甘いものを控え、歯磨きを習慣にすることが大切です。
むし歯菌がいても、発症しなければ問題ありません。赤ちゃんの未来の歯の健康のために、家族みんなで予防習慣を見直していきましょう。