
「できるだけ自分の歯を長く使い続けたい」──これは、多くの方に共通する願いではないでしょうか。
重度のむし歯では、歯の根の内部を清掃・消毒する「根管治療」によって歯を残すことができます。ただし、根管治療後の歯にはいくつかのリスクがあることも知っておく必要があります。
今回はご自身の歯根を残すことの大切さや、根管治療後に起こりやすいトラブルについてわかりやすくご紹介します。
目次
⬛︎なぜ自分の「歯根」を残すことが大切なのか
◎天然の歯根は、人工物では再現できない機能を持っています
歯根の表面には「歯根膜(しこんまく)」という薄い組織があります。歯根膜は噛んだときの力をクッションのように受け止めたり、繊細な感覚を脳に伝えたりする役割を持っており、インプラントやブリッジではこの機能を再現することができません。
また、歯の神経(歯髄)が生きていれば血管を通じて栄養が供給され続けるため、歯の強度が保たれます。むし歯の再発時にしみや痛みで異常を感知できるのも、神経が残っているからこそです。
こうした理由から、自分の歯根と神経を残すことは、歯を長持ちさせるうえでとても大切なのです。
⬛︎根管治療で歯を残せても、歯はもろくなる?
◎神経を取り除いた歯は、栄養が届かなくなり弱くなります
むし歯が歯髄にまで達してしまった場合、感染した神経を除去する「抜髄(ばつずい)」と、根管内部を清掃・消毒する「根管治療」を行います。この治療によって歯を抜かずに残せることは大きなメリットです。
しかし、根管治療で歯髄を取り除くと、歯に栄養を届けていた血管も一緒に失われます。栄養が届かなくなった歯は、少しずつ弾力を失い、もろくなっていくのです。
加えて、根管治療では根管内部にアクセスするために歯を大きく削る必要があるため、残る歯質の量も少なくなります。「神経がなくなること」と「歯質が減ること」、この二つが重なることで、治療後の歯は割れたり欠けたりするリスクが高まるのです。
⬛︎根管治療後に起こりやすい歯のトラブル
◎歯根破折(しこんはせつ)
歯根破折とは、歯の根が割れたりヒビが入ったりする症状です。神経を失ってもろくなった歯は、長年の噛む力や歯ぎしりなどのダメージが蓄積し、歯根破折が起きてしまうケースも。
歯根が大きく破折してしまうと、歯を残すことが難しくなり、抜歯が必要になるケースも少なくありません。
◎フィステル(サイナストラクト)
フィステル(サイナストラクト)とは、歯根の先に溜まった膿が排出される際に、歯ぐきの表面にできる白っぽい小さな膨らみのことです。
根管治療時に細菌が取りきれなかった場合や、治療後に再感染が起こった場合などに、歯根の先端で炎症が進行し、膿が溜まることで発生します。
痛みを伴わないこともありますが、自然に治ることはなく、放置すると周囲の骨が溶けて症状が悪化する恐れがあります。
◎歯根嚢胞(しこんのうほう)
歯根嚢胞とは、歯根の先端に袋状の病変(嚢胞)ができ、内部に膿や滲出液が溜まる疾患です。根管治療後の再感染や歯根破折などが原因で起こることがあります。
嚢胞が大きくなると、噛んだときにズーンとした圧迫感や痛みを感じたり、顎の骨(歯槽骨)が溶けて歯がグラグラになったりすることもあります。状態によっては、嚢胞を取り除くための外科的な処置が必要になる場合もあります。
※外科的な処置が必要な場合、口腔外科のある病院をご紹介しております。
【自分の歯を守るために、早めの受診と予防を心がけましょう】
根管治療は、重度のむし歯から歯を救うための大切な治療です。一方で、神経を失った歯にはさまざまなリスクが伴うことも事実です。
だからこそ、まずはむし歯を進行させないこと──そして万が一根管治療が必要になった場合でも、治療後の定期的なメンテナンスを欠かさないことが、歯を長く守るための近道です。
当院では定期検診も行っております。患者様一人ひとりのお口のなかを丁寧に確認し、将来のトラブルを未然に防ぐサポートをいたします。
