
入れ歯の選び方は支え方とお口全体の状態で決まる
部分入れ歯はご自身の残っている歯と歯ぐきで支え、総入れ歯は歯がなくなったあごの歯ぐき全体で支えるというつくりの違いがあります。どちらが合うかは残っている歯の数だけでなく、歯の根や歯ぐき、噛み合わせのようすもあわせて見て決めます。この記事では食事や会話での変化、毎日の着け外しと手入れの基本、受診のときに確かめたい検査や質問をまとめます。
この記事の要点まとめ
- 部分入れ歯は残っている歯と歯ぐき、総入れ歯は主に歯ぐきで支えます。
- 適応は歯の本数だけでなく、歯の根や歯ぐき、噛み合わせを診て検討します。
- 食事や会話への慣れ、着脱と清掃の方法を知り、検査や費用について歯科医師に相談しましょう。
部分入れ歯と総入れ歯の違いは「何で支えるか」にある
部分入れ歯と総入れ歯の大きな違いは、噛む力を「何で受け止めるか」という支え方の構造にあります。
部分入れ歯はバネをかける歯と歯ぐきで力を分け合う
部分入れ歯は、なくした歯の代わりになる人工の歯とピンク色の土台(義歯床:ぎししょう)に、クラスプ(金属や樹脂のバネ)がついたつくりです。残っているご自身の歯(残存歯)にバネをかけ、歯ぐきとご自身の歯の両方で噛む力を分け合うしくみです。
奥歯がなく、歯ぐきの土手が奥へ下がっている形だと、噛む力で入れ歯が奥へ動きやすく、支えの歯にも負担がかかりやすいとされています。入れ歯の土台を奥歯のうしろの歯ぐきのふくらみまで広げたり、別の場所にも支えを設けたりする設計が、そのずれを抑えるのに役立ちます1。
総入れ歯は歯ぐきと顎の骨の土台に吸い付いて安定する
総入れ歯は、上か下のあごの歯をすべてなくしたときに使う入れ歯です。バネをかける歯がないため、土台を歯ぐきにぴったり合わせ、つばによる吸い付く力と、くちびる・ほお・舌の筋肉のつり合いで安定させます。
土台となる顎の骨の高さや歯ぐきの厚みが安定感を左右します。特に下顎は舌が動き、支える面積も狭いため、上顎に比べて動きやすい傾向があります。
支え方・噛み心地・手入れの違いを一覧表で整理
両者の特徴を、支え方や日々の手入れの視点から整理しました。
| 比べる項目 | 部分入れ歯 | 総入れ歯 |
|---|---|---|
| 支え方 | 残存歯(バネ)と歯ぐき | 歯ぐきと顎の骨の土台、周囲の筋肉 |
| 残存歯への負担 | バネをかける歯に力がかかる | 残存歯はない(顎の骨が力を受ける) |
| 噛む力の感じ方 | 残存歯の支えがあり力が伝わりやすい | 粘膜全体で受けるため慣れが必要 |
| 着脱のしかた | バネの向きに合わせて着脱する | 空気を抜くように密着させ、端から外す |
| 清掃の対象 | 入れ歯本体と残っている歯の両方2 | 入れ歯本体と歯ぐき・舌などの粘膜 |
人工歯の噛む面の形を変えても、噛みやすさにはっきりした差は出ていません。入れ歯の種類や形だけでなく、お口の状態にどれだけ合っているかが使い心地を左右します。
歯が何本残れば部分入れ歯?本数だけでは決まらない適応の考え方
「歯が減ったら総入れ歯になる」「ぐらつく歯は抜くしかない」と思われがちですが、適応は歯の本数だけで決まるわけではありません。
「何本以下なら総入れ歯」という決まった線はない
残っている歯が1本だけでも、その歯の位置や根の状態が良ければ部分入れ歯の支えとして活かせる場合があります。反対に、歯が何本か残っていても、重度の歯周病などで支える力が乏しい場合は、別の設計を検討することもあります。
また、歯を1本だけ失ったケースでも部分入れ歯を作製することは可能です。
ぐらつく歯・むし歯の歯を残せるかは根と歯ぐきで判断する
歯は一度削ったり抜いたりすると、もとに戻すことはできません。そのため、まずは歯の揺れぐあいや、歯周病でやせた骨の量、根の中のようすを確かめます。そのうえで、歯周病の治療や歯の根の治療(根管治療や外科的処置など)で歯を残せるかを考えます。
抜歯して総入れ歯にするか、歯を残して部分入れ歯にするかは、残す歯にかかる負担と将来的な見通しを合わせて判断します。
ポイント
適応は歯の本数だけでなく、残っている歯の根や歯ぐきの状態、長期的な負担を確かめて判断されます。
噛み合わせと上下の組み合わせも安定を左右する
上顎が総入れ歯で下顎が部分入れ歯といった組み合わせでは、上と下で入れ歯の支え方が違うため、噛む力のかかり方に偏りが出ることがあります。上下の噛み合わせのバランスを整えることが、入れ歯の安定につながります。
なお、入れ歯以外にもブリッジや、顎の骨に人工歯根を埋め込むインプラント、少数のインプラントで入れ歯を固定するインプラントオーバーデンチャーなどの方法もあります。これらは骨の量や全身の健康状態によって向き不向きが分かれます。
食事・会話・毎日の着脱と清掃で感じやすい違い

入れ歯の種類によって、食事や会話の感覚、毎日の手入れの手順にも違いが出てきます。
噛む力と食べ物の感じ方はどう変わるか
部分入れ歯は残っている歯が支えの一部を担うため、噛みしめたときの感覚が残りやすい傾向があります。一方、総入れ歯は粘膜で力を受け止めるため、たくあんのような硬いものや粘り気のある食品を噛むには、練習と慣れが必要になりやすいです。
入れ歯をはめたあとは、何度か調整を重ねてお口になじませていくことが大切です。
話し方や口元の変化は慣れと調整で変わる
総入れ歯は上あごを広く覆うため、使い始めは舌の当たり方が変わり、話しにくく感じることがあります。部分入れ歯では、バネがかかる位置によって笑ったときの口元の印象が気になる方もいらっしゃいます。
多くは時間とともに慣れていきますが、2週間以上たっても外れやすい、話しにくい、当たって痛むといった症状が続く場合は、歯科医院で調整を受ける目安になります。
指がこわばる日でもできる着脱と清掃の基本
部分入れ歯を外すときは、爪で無理に引っ張るとバネが変形しやすいため、指の腹をバネの根元に添えてまっすぐ外します。手元が滑りやすいときや指がこわばる日は、落下防止のために洗面器に水を張った上で着脱と洗浄を行うと破損を防ぎやすくなります。
清掃のときは入れ歯専用のブラシを使います。ふつうの歯みがき粉には研磨剤が入っていることが多く、入れ歯に細かい傷がついてそこから細菌が増えるおそれがあるため、入れ歯には使わないようにします2。部分入れ歯の方は、汚れが溜まりやすいバネのかかる歯も丁寧に磨いてください。
着脱のしやすさは設計で配慮できる場合があるため、指の動かしにくさがあれば事前に伝えておくとスムーズです。
どちらが向くかを見極めるために受診時に確かめたいこと
部分入れ歯と総入れ歯は、どちらが優れているかではなく、現在のお口の状態にどちらが合っているかという視点で選びます。
部分入れ歯が向く人・総入れ歯が向く人の目安
支えにできる歯が残っており、歯周病の管理や毎日の清掃を続けられる方には部分入れ歯が向いています。一方で、残っている歯の支える力が乏しく、バネの負担をかけ続けることでかえって痛みや腫れを招きやすい場合は、総入れ歯へ切り替える選択も検討されます。最終的な適応は歯科医師が診察のうえで判断します。
歯科用CTやレントゲンで確かめる歯の根と顎の骨
残せる歯の見通しや入れ歯の土台を調べるため、まずはレントゲンで歯の根のようすや、骨がどれくらい減っているかを確かめます。さらに、顎の骨の厚みや立体的な形、神経の位置などを詳しく把握する必要がある場合には、歯科用CTによる検査が行われることもあります。
すべての方にCT撮影が必要なわけではなく、お口の状態や検討する治療法に応じて検査を選びます。
関市の中島歯科医院で相談するときに伝えたい症状と質問
関市で入れ歯の相談を検討される際は、「食事中に入れ歯が動く」「バネのかかる歯が揺れる」「指がこわばる日があり着脱が心配」といった具体的な症状をメモして伝えると診察がスムーズです。あわせて、以下の点を確認しておくと見通しが立てやすくなります。
- 残せる歯の見通しと、歯を抜くことや歯周病の治療が必要か(歯を抜いたあと傷が治るのを待つときは、できあがるまでの期間が変わります)
- 必要な検査の種類と、できあがるまでの通院回数や期間の目安(新しく作るときは、型取り、噛み合わせの記録、試しにはめる確認、装着、調整と段階をふんで進みます)
- 保険診療と自費診療の選択肢と費用目安:金属床義歯やバネのないノンクラスプデンチャーなどの自費診療は、公的医療保険が使えません。一般的な相場は10万〜50万円ほどで、設計や素材で幅があります。ここに書いた金額は一般的な相場で当院の費用ではなく、実際の費用は医療機関によって変わります。
- 使うときに気をつけること:部分入れ歯は、バネをかける歯と土台の下の歯ぐきで噛む力を分け合い、歯だけに負担が集まらないようにするしくみです3。使い始めの違和感や歯ぐきの痛みが出たときの調整のしかたも、あわせて聞いておきましょう。
現在使っている入れ歯の調整で対応できるか、新しく作るべきかも含め、まずはお口の状態を歯科医院で相談してみてください。
よくある質問
Q1. 部分入れ歯と総入れ歯、どちらが良いですか?
A. どちらが優れているというものではなく、お口の中に支えとして活かせる歯が残っているかどうかで適応が分かれます。ご自身の歯を活かせる場合は部分入れ歯を優先して検討しますが、揺れが強く残すことで食事の妨げになる場合は総入れ歯が適しているケースもあります。お口の状態に合わせて歯科医師と相談しながら選んでいきます。
Q2. 部分入れ歯は1本だけ入れられますか?
A. はい、失った歯が1本だけの場合でも部分入れ歯を作ることは可能です。隣の歯を大きく削るブリッジや、外科処置を伴うインプラントを避けたい場合に選ばれることがあります。取り外して清掃する手間はありますが、周囲の歯を削る量を抑えられる点が特徴です。
Q3. 部分入れ歯と総入れ歯、どちらが安いですか?
A. 保険で作るときは、残っている歯の数やつくりによって払うお金が変わり、部分入れ歯のほうがやや低くなりやすいです。めやすは、3割負担で部分入れ歯が数千〜1万5千円ほど、総入れ歯が上か下の片方で1万〜1万5千円ほどです。保険がきかない入れ歯は、使う材料によって10万〜50万円ほどがよく見られる金額です。
なお、ここに書いた金額は一般的な相場で、当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関によって変わります。
Q4. 総入れ歯にして戸惑う人はいますか?
A. 初めて総入れ歯にした際、「思ったより大きくて違和感がある」「硬いものがすぐには噛めない」と戸惑う方はいらっしゃいます。総入れ歯は粘膜の上に乗せる構造のため、お口の筋肉が入れ歯に慣れるまでの期間と、当たって痛む部分を整える数回の調整が必要です。焦らず段階的に調整を重ね、少しずつお口に馴染ませていきます。
参考文献
1. 部分床義歯の設計. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjps1957/51/2/51_2_241/_article/-char/ja/
2. 清潔な入れ歯でなんでもおいしく食べよう! | 大垣市公式ホームページ/水の都おおがき https://www.city.ogaki.lg.jp/0000020630.html
3. 入れ歯 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/lose/index17.html
4. Pieralli S, Kohal RJ, Rabel K et al. Clinical outcomes of partial and full-arch all-ceramic implant-supported fixed dental prostheses. A systematic review and meta-analysis. Clinical oral implants research. 2018. PMID: 30306694 / DOI: 10.1111/clr.13345
5. Zandinejad A, Floriani F, Lin WS et al. Clinical outcomes of milled, 3D-printed, and conventional complete dentures in edentulous patients: A systematic review and meta-analysis. Journal of prosthodontics : official journal of the American College of Prosthodontists. 2024. PMID: 38666691 / DOI: 10.1111/jopr.13859
大阪歯科大学 卒業
大阪歯科大学矯正科 臨床研修医
1994年~1997年
土居歯科医院 勤務
1997年
中島歯科医院 院長就任
日本歯科医師会 会員
岐阜県歯科医師会 会員
関歯科医師会 会員
日本矯正歯科学会 会員
近畿・東海矯正歯科学会 会員
【校医】
瀬尻小学校 校医
あかつき幼稚園 園医
桐ヶ丘幼稚園 園医
